脂漏性皮膚炎とは、カビの一種であるマラセチア菌が、皮膚上で増殖し、炎症を引き起こす疾患です。マラセチア菌は、毛穴につまった皮脂を栄養源として繁殖するために、脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔に起こりやすいとされ、男女問わず注意が必要です。脂漏性皮膚炎は、脇の下など頭部以外の箇所にも発生することもあります。
脂漏性皮膚炎の原因菌であるマラセチア菌は、常在菌であり誰の皮膚にも存在します。栄養バランスや生活リズムの乱れ、ホルモン異常により、マラセチア菌の異常増殖が開始され、脂漏性皮膚炎に移行します。皮脂の過剰分泌が最も重大な危険因子とされてしまいます。マラセチア菌は皮脂の分泌が多い頭皮を好むため、頭皮で発生することが多いと考えられています。
脂漏性皮膚炎の初期症状として、フケができたり匂いが出たりといった症状が認められます。その後、かゆみや炎症などの症状を発症します。頭皮に炎症が進行すると、薄毛に移行することもあります。脂漏性皮膚炎による薄毛を、脂漏性脱毛症と呼んでいます。
脂漏性皮膚炎は、菌の繁殖により炎症が起きる皮膚疾患であり、まずは皮膚科を受診する必要があります。脂漏性皮膚炎の治療には、一般的にマラセチア菌に対して殺菌効果がある外用抗真菌薬が処方されます。また炎症を抑える抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤などの内服薬、皮脂分泌を抑制するビタミン剤などが処方される場合もあります。肌にやさしいアミノ酸シャンプーも利用できます。スカルプ系のシャンプーには、アミノ酸と抗真菌剤の両方の成分が入っているため、症状が進行している方にも有効です。
脂漏性皮膚炎を放置し症状が悪化すると、その領域に薄毛症状が認められることがあります。その症状を、脂漏性脱毛症と呼んでいます。一度抜け毛が進行すると、自然に毛髪が回復することは難しいことが知られています。これまで脂漏性脱毛症は治療に難渋していましたが、近年、脂漏性脱毛症に、ハーグ療法が有効であることが分かり、治療効果が確認されるようになりました。頭皮に毛髪再生因子を注射することで、自己毛髪が再生されています。
35歳、男性。脂漏性皮膚炎による薄毛、脂漏性脱毛症の治療
症例経過:頭皮に脂漏性皮膚炎を患い、塗り薬や内服のビタミンにて治療中であった症例です。1年くらい前から、抜け毛が多くなり薄毛が進行してきたために心配になり、仙台中央クリニックを受診していただきました。診察したところ、頭部に広範囲に脂漏性皮膚炎が広がり、皮膚は赤くなり、フケが多い状態でした。自己毛髪は減少し、前頭部や頭頂部を中心に薄毛領域が広がっていました。せめて50歳くらいまでは、毛髪を維持したいという希望により、毛髪再生ハーグ療法を行いました。ハーグ治療による治療後3回目から、髪に艶が出て、毛量が増え始めました。
症例解説:脂漏性皮膚炎は頭皮に起こりやすい皮膚疾患ですが、抜け毛が多くなり薄毛が進行すると脂漏性脱毛症に移行します。これまで脂漏性脱毛症は、治療が困難でしたが、近年、ハーグ療法が脂漏性脱毛症に効果を示すことが分かり、治療が行われるようになりました。ハーグ療法は、1か月に1度、頭皮に直接栄養因子を注入する治療法ですが、3回から4回治療を行ったあたりから、効果が認められることが多く、自己毛髪の再生が期待できます。ハーグ療法には、治療後頭皮の発赤や、出血が認められるというデメリットがあります。洗髪や毛染めが制限されることもあるため注意が必要になります。